ヘクトル(Hector)

 トロイ王国第一王子であり、トロイ軍の総大将。トロイア戦争中、アキレスとの対決で命を落とします。
典型的おにいちゃんキャラとでもいいましょうか。第一子の私は、なんとなく気持ちがわからないでもないといいますか(笑)。映画(というよりDVD)“TROY”で初めてこの人物に惹かれ、その後、元ネタであるイリアスを読みました。両者でイメージは若干異なりますが、どちらにしても、まっすぐで懐も深く、魅力的な人だと思います。

 009のジョーとは違って、育ちは最高にいいですし(王族ですから・・・)、よき家族に恵まれていますが、どこか上に立つものとしての孤独を感じます。さらに、映画TROY の中では、周囲の平和ボケした父王や側近、狂信的な神官たちに囲まれ、なんだかいつも辛い立場に立たされています。戦闘での指揮権は与えられているけれども、肝心の政治の部分では、全くと言っていいほど、意見が通らない。まったくひどい扱いです!イリアスの方では、さすがにそれほどでもないような気はしますが・・・。(そもそも、神が存在していることが前提ですから、神官問題はとりあえず考えなくていいですしね、笑)

 戦士としてのヘクトルは・・・アキレスのように一方的に強いわけではないようです。映画では、やっとこさアイアスに勝ってましたし、イリアス中では劣勢だったり命が危なくなったり、という場面が何度も出てきます。それにそもそも、彼の場合は戦いそのものが目的でもない。映画の中では、“戦いたくない”と、妻にはっきりと言っていますが、実際には常に戦いの前線に身を置いています。戦わないと愛する人を、国を、守れないから。・・・そういう悲壮感が、我が愛するゼロナイにも通じているのかも・・・と思います(笑)。一方“イリアス”では、ここまでの悲壮感は表立っては表現されていませんけど、戦争の元になった弟にはいつも腹を立てているし、攻撃の失敗を気に病んだりもするし、総大将の気苦労は、やはり感じられます・・・。

 特筆すべきは、やはり夫婦仲が非常にいいこと、ではないでしょうか。映画では、他のカプ(アキレス/ブリセイスやパリス/ヘレン)みたいにベッドシーンが出てきたわけではないですが、かえってこのつつましい夫婦の愛がとても素敵に感じられます。イリアスでも、人がばったばったと死ぬストーリーのなかで、夫婦の語らいは数少ない癒しの場面となってますし、それ以外でも夫婦愛を感じる場面が散見されます。だからこそ、ヘクトル
の死はいっそう悲しく感じられます。

 特に映画のキャラクターでは、なのですが、トロイ軍総司令官で最強の戦士でありながら、(髭面で筋肉隆々でありながら!)なぜか可憐で儚げな感じがしてしまいます。襟さんの演技力の賜物なのでしょうか・・・。


これは、アキヘク絵に使った全身像にマントを付足して視線を変えたもの。鎧描くのは楽しかったけど、もう一度描く気はちょっと起こらないので(笑)再利用です!