*** 宇宙樹 編 (1) ***

 
(プロローグ)

 北欧神話における世界の始まり・・・ギンヌンガガップ、巨人、神々、最初の人間たち、そして宇宙樹イグドラズィル。神秘的で壮大な幕開けです。当時私は知りませんでしたが・・・原作を既にご存知だった方だったらおそらく天使編や神々との戦い編をイメージされたりもなさったんじゃないかと思います。(まあ・・・最初の壮大さから比べると、終わり方はいささか残念ではありましたが・・・笑)


第1話 よみがえった神々
脚本:辻 真先

 嵐の夜。崖の上の洋館に響き渡るイワンの泣き声・・・新たな『人間以上の敵』の出現の予告。ドラマティックな幕開けに、気分は高まります。・・・そして世界各地で平和な生活を送っていた00ナンバーが集結することとなります・・・。この演出はとても印象的で素晴らしいのです。ジョーとジェットのレースシーンの合間に、その他のメンバーが故郷を後にするシーンが現れます。メンバーの紹介はエンジン音とともに。とにかくかっこいい!!
 
フランソワーズはパリ・オペラ座でバレエを踊っていました。・・・ただ、このシーン!どう考えても練習着なんですけどねえ・・・。髪もアップじゃないし(笑)でも、バレエ仲間が、「素晴らしかったわあ」と褒め称えているので、本番なんでしょうか??? ・・・それにまあ、グレート&アルベルトだって、まさか練習に花束をもってくるわけ・・・ないですもんね! ・・・ついでにちょっと思ったのですが、このときのフランソワーズの紹介の静止画だけ、やけに大人びた表情なんです。キライじゃないですけど・・・。
 レース前のジョーとジェットの語らいは、とっても好きです。二人ともスタイルよくてすごくかっこいいし、会話が戦いに赴く前の決意を秘めつつも暗くなりすぎないところもいいです♪何よりジェットが(特に平ゼロと比べて、笑)兄貴らしくて素敵です〜!また、井上さんの初々しい声もいいですね(笑)。レース中の二人のやり取りもいい感じです。
 ・・・そして、サーキットに現れる巨人。岩にルーン文字で“ヨッツンハイム”と書いて消えます。これが新たなる敵?・・・との予感。

 ギルモア研究所に00ナンバーの面々が集合したところに、3人の巨人がアメリカ西海岸に現れたとのニュースが。ジョーとジェットは一足先に(笑)現地に向かい、残りのメンバーはドルフィンII世号で追いかけます。日本からアメリカまでジョーを抱えて飛んでいくなんて、冷静に考えてやっぱり大変そうです・・・。
 そして巨人たちとの戦い・・・。まあ、平ゼロをみちゃった後だと、動きも緩慢だし、何でこんなとこでジョーってばヤラれちゃうの〜???・・・という感じがしないこともないのですが(笑)ここでジョーが怪我をするのはおそらく、ジョーたちが普通の人間でない、ということを明確にする、という意図があったのでしょう。そして追いついた仲間たちが戦いに加わり、ここでフランソワーズ以外のメンバーは、その能力が紹介されます。ここの演出もなかなか素敵です♪
 しかし、00ナンバーをもってしても巨人を全て倒すことは出来ず、残った一人の巨人の暴れた衝撃が原因で安全装置がはずれ、核弾頭ミサイルが誤発射されます。傷ついた身体を省みずミサイルを止めようとするジョーと、それを引き止めるジェット、そして呆然とするフランソワーズ・・・なす術もなく立ちすくむ00ナンバーの目の前で突如神々しい光がきらめき、ミサイルが消失します。・・・そう、この恐るべき力を持つ何者かが、新たな敵・・・・・・?壮大な展開を予感させるような1話の終わり。脚本の辻さんの思い入れが感じられます。



第2話 氷に眠る巨人
脚本:酒井 あきよし 

 ノルウエーの沖合いの海で漁に出ている漁師の父子。巨人の閉じ込められた氷山に激突し、父は行方不明、息子は助かりますが、港の人々は「(父は)巨人に殺された」という少年の言葉を信じていません。 
 ノルウエーの港町のバーに立ち寄ったジョーは、マスターからこの少年ペールの話を聞きます。また、ここで初めて、北欧神話の神、“オーディン”という名が語られます。それにしても・・・ストレンジャーを運転してバーに立ち寄って、ウイスキーのロックみたいに見えるものを飲んで・・・いいのだろうか(悩)。ノルウエーはビールやワインは18歳からOKですが、蒸留酒は20歳までNG・・・ジョー、ノルウエーの法律でもウイスキーはNGですよ〜〜!!
 この話のジョー、トレンチコートにマフラーをたなびかせ、かっこいいです。(これでマフラーが白じゃなければもっとよかったんですが・・・笑)絵の感じは微妙に違うんですけど・・・崩れてるというかんじではないです。また、ノルウエーの港や山などの風景が、とても情緒があっていいのです。港町のひなびた感じなんて、本当に素敵。当時のアニメージュによると、第5話くらいまでは、背景を“ハーモニー効果”を使って仕上げた、ということで、これがなんとも情緒的な雰囲気をかもし出しているように思います。
 少年ペールの家で人の気配に気づいたジョーが、人影を追いかけていくと、いつの間にかバイキングの墓に誘い込まれます。ここで出てきたロボットは、原作のデザインと同じでした。ロボットは倒したものの突然墓が動きだし、ジョーは閉じ込められたまま海へ。
 墓から抜け出して戻ってきたジョーと少年ペールとの語らいの中で、ジョーの孤独な生い立ちにちょっと触れられています。ジョーは自分の生い立ちをペールに語ることはなく、優しく励ましていますが、こういう押し付けでないところもいいです・・・。

 突然、港の霧笛が大きく響きだし、港に向うペールとジョー。ロキ(この時点では名前は語られてはいませんが・・・)が、港に流れ着いた氷山の中に眠る巨人をよみがえらせます。この巨人の名前はイミール。ペールは「父ちゃんの仇!」と、父のモリを巨人に向って投げますが、当然まったく歯が立たず。巨人からの攻撃でペールは気を失ってしったようで、攻撃を避けるためにジョーは加速装置を使うのですが・・・これは、本当はご法度なはずなんですよね。生身の人間に加速装置は使えない・・・はずで(笑)。でも、新ゼロでは、そういうことにはなってなくて、時折加速装置で人間を助けたりしてたような気がします・・・。ともかく、この話は、初めての「かそくそーち!」という台詞つき。ちょっと遠慮がちなのがまたなんとも(笑)。
 で、やはり危機一髪のところに、ドルフィン号で巨人を追跡していた仲間が援護を開始。あと一歩で巨人を倒せるところで、またも巨人は神・オーディンによって消されてしまいます。・・・人間なんぞに巨人が倒されたのでは都合が悪い・・・ということなのかな??・・・後の話を見ると。
 巨人、神・・・という超常的なものを見せ付けられ、なお納得できず熱くなっているギルモア博士。そんな博士を尻目にイワンがやや冷たく「休ませてもらうよ」と、ゆりかごに乗ったまま去っていくのが、ちょっと笑えます。 

 

第3話 凱旋門の鬼
脚本:辻 真先 

 この話だけ、予告がフランソワーズなんです。やや違和感がないでもなく・・・何だか内容もいまひとつで。でも、本編はいいです!
 パリののどかな風景で始まります。この話も、ハーモニー効果の背景が美しいのです。パリの街並みがとても情緒的に現されてますし、凱旋門やノートルダム寺院も美しいです。そして、花売りのアンナ登場。アコーディオン弾きのジョペットじいさんと二人で暮らしているようです。ジョペットがアコーディオンを弾いているときに突然足元の大地が裂け、そのまま地中へ。アンナは気を失い、地中から巨人の手に乗ってジョペットが現れます。その後の展開をみると、このときに本物のジョペットは亡くなってしまい、オーディンが偽ジョペットとして現れている、というように解釈できるようです。
 ・・・そして、巨人がパリの街を荒らしまわり、00ナンバーのみんながドルフィン号でパリに飛びます。ドルフィン号の中で、神に祈るフランソワーズ。でもそこでアルベルトは皮肉たっぷりの一言。「誰に祈ってるんだい?」・・・宗教心が希薄な日本での製作なので仕方がないのですが(笑)・・・キリスト教の“神”と、神話の神はイコールではないと思うのですが、この辺がどうも曖昧になっているような気がします。ただし、この展開自体は(贔屓目にみれば)分からないでもありません。神と呼ばれる者が敵かもしれない状況で、(それがどんな種類の神であっても)神に祈ることに意味なんてあるのか?というようにも取れるからです。(対して平ゼロでオリンポスの神を敵としているときにフランソワーズが神に祈れない、という展開のほうは明らかに変!詳細は平ゼロ感想にて文句たれる予定(笑)。)

 戦いのシーンはまあ、こんなもんかと。これだけは、やはり平ゼロと比べると動きの鋭さで負けます(泣)。皆で協力しつつ戦っている雰囲気は出ていますが、突っ込みどころもあり(笑)。地下にもぐろうとする巨人を追いかけるジェットが空に飛び出すところとか。でも、ジェットの喧嘩っ早さの雰囲気がよく出てはいます♪また、戦闘後、ジョペットの後を犬に化けて尾行していたブリテンは、すぐに変装を見破られてしまっているようです。思えば、ブリテンの追跡って、成功したためしがないようにも(笑)。
 戦闘の際に切り落とされた巨人の腕は、ドルフィン号に持ち込まれます。どこから入れたんだろう?とかいう疑問もありますが!・・・ロボットではない、石の塊の巨人の腕にメンバー困惑。「国連に知らせよう」というイワンの提案はギルモア博士に却下されます。でっち上げと言われてしまうだろう、ということなのです。結局、それなら巨人を丸ごと捕まえてしまおう、という結論に達します。
 (このシーン、最初の設定だと、腕はロボットだったようです。なぜ最終的に、こういう設定になったのかは、謎。第5話があるせいかもしれませんが・・・)
 そこに腕を返せという声が。巨人を捕まえるチャンスだ!ということで、00ナンバーはトラックに腕(に化けたブリテン)を載せて凱旋門へ。モチロン、運転はアルベルトです!一方、偽ジョペットは、アンナに先に帰宅するよう告げて自分は凱旋門へ。
 そして、凱旋門で巨人と00ナンバーたちとの戦いが始まります。巨人が劣勢になってきたところでジョペット(に化けているオーディン)は炎を巻き起こして巨人を消そうとしますが、そこに、ジョペットを気遣って戻ってきたアンナが、炎の中のおじいさんを助けようとして大火傷を負います。

 巨人が消え、荘厳な雰囲気の中で、オーディンとジョー&ジェットの対話が始まります。オーディンは、人間離れした彼らに対し、神として自分に仕えるよう求めます。彼の論理は、神という圧倒的力を持ったものが、愚かな人類を支配するべき、というものです。
 ここのジェットやジョーの台詞は全て、とてもいいのです。(本当なら全部紹介したいくらいです)ジェットは、ジョペットをかばったアンナを思い、オーディンを責めます。でも、返事は「ゆえに人間は愚かだと申しておろう」この言葉にキレたジェットはオーディンに立ち向かいますが、あっけなくかわされます。このジェットの行動も好きなんですよね。喧嘩っ早いジェットの性格がよく現れてます。
ジョーは、「僕達は人間だ。神なんかになりたくない!人間をひどい目に合わせて何もしてやらない神なんか、誰も神として崇めるものか!」といいますが、オーディンは、「所詮お前たちも人間だ」といいつつも「あきらめたわけではない」と言い残して天に昇っていきます。
 アンナの火傷はひどく、苦しみの中で、それでもおじいちゃんを心配しています。アルベルトが「じいさんは生きている!」といいますが、アンナは「声を聞かせて・・・」と懇願します。困った00ナンバー。「せめて・・・おじいちゃんの音楽を・・・聞かせて」・・・すると、どこかからアコーディオンの音が。ブリテンが破壊された凱旋門の影でアコーディオンを涙ながらに奏でていました。それを聞き、アンナは「よかった・・・生きてたのね、おじいちゃん・・・」とつぶやき息を引き取ります。
 ここ、本当に悲しいのです。アコーディオンのメロディーが、長調なんですが、どこか物悲しくて。確か放映時も、このシーンはものすごく印象的だったような記憶があります・・・。おじいさんの奏でていたメロディーは、アンナへの鎮魂歌になってしまいました・・・。ただ、なぜブリテンがこのメロディーを知っていたか疑問なんですが・・・。実はフランスではメジャーな曲だったりするのでしょうか・・・? 新ゼロのブリテンは失敗も多いけど、どこか懐が深くてあったかい感じがして、大好きです。
 さあ、そして、ジョーの決め台詞!

「愛を認めない神なんて、そんな神があってたまるか!・・・僕たちはちっぽけな人間だ。だが・・・だが僕は、お前なんかを神とは認めない!!」

 天を仰ぎ、決意を新たにするジョー。う〜〜ん!かっこいいです!!

 

第4話 誇りに燃えよアフリカの星
脚本:辻 真先 

 この話、絵の崩れがすごい・・・んです!いきなりがっかりです。最初のピラミッドやスフィンクスはやはり美しく仕上げられているんですけどね。なにしろ人物の崩れがひどすぎ。
 日本でちっちゃな中華飯店を開いたらしい、張大人。(集合前は、レストラン王だったのに・・・笑)ここでのやり取りは、なんだかちょっと冴えない漫才みたい・・・(汗)。テンポが悪いんですよね・・・。バイクで現れたジェットはかっこよかったけど♪・・・それから、その後は気になる台詞も。ギルモア研究所でメンバが語り合っているときにピュンマが言った、“一つ釜の飯”という表現。“一つ屋根の下”“同じ釜の飯”ですよね〜〜!!

 ピュンマの同志・ジャッカが巨人を倒しに向うという手紙を見て、一同はアフリカに向います。(このジャッカは、1話でピュンマがアフリカを去るときにも登場してます。)しかし、00ナンバーのみんながであったのは、廃人のようになってしまったジャッカでした。“勇者”ジャッカも巨人を倒すことはできず、目の前で“神”を名乗るトールがいとも簡単に巨人を倒してしまったのをみて、自分の存在価値を見失ったのです。(こういう展開・・・って、意外と現実でもあったりして。大人になってみると結構痛いです・・。)ジャッカは酒びたりの日々を送っていました。自分たちと共に巨人と戦おう、とピュンマは励ましますが、ジャッカは聞く耳をみちません。

 アフリカ各地の民衆は扇動され、神を崇めるため?に行進をはじめます。やがてピラミッドの回りにおびただしい人々が集まります。虐げられた人々は神の奇跡を待っていた・・・ということだそうです。00ナンバーもそこへ到着。すると、そこに巨人が出現。そのニュースがラジオから流れ、そのニュースを聞いたジャッカはもう一度自分の手で巨人打倒に挑戦すべくピラミッドのあるナイル下流に向います。(明らかにジャングルにいるジャッカが一体どれほどの時間で、ナイル下流までたどり着けるんでしょうか!(笑))
 巨人を神・トールが倒そうとしたところにジャッカが現れ、もう一度巨人に立ち向かいますが、やはりジャッカが撃ったライフルの弾はまったく効き目なしです。すると、フランソワーズが透視により、巨人にバリアが張られていること、その制御装置が地下にあることを突き止めます。・・・ここで・・・第4話にして初めて、やっとフランソワーズの能力紹介だったんです!・・・まあ結局、巨人騒ぎは神の力を民衆に見せ付けるための猿芝居だったんですね。張大人がもぐって制御装置を破壊し、バリアが消えると、ジャッカに再度巨人に立ち向かうよう、ジョーたちは促します。しかし自信を失ったジャッカは拒否。すると、ジャッカを尊敬する少年が、渇(笑)をいれ、ジャッカは再び巨人と対峙することに。そして・・・ジャッカの撃った弾が巨人にダメージを与え、続いて00ナンバーも加わって、ついに巨人を倒します。ジョーは、人間の自分たちでも巨人を倒すことが出来たとトールに訴えます。しかし、神の御業を妨げたものとしてトールは怒り、万能の槌でジャッカと少年を襲います。ここでなんで加速装置を使わないのだ、ジョー!!!00ナンバーのみんなは、一人も、人間の二人を助けようとしていない・・・・・・のです。むしろ、二人を置きざりに逃げたような格好・・・(汗)そしてジャッカは神の槌の犠牲に。あ〜あ・・・。
 そして・・・民衆にまぎれたロキやオーディンの扇動により、00ナンバーは(神の怒りに触れてしまった)人類の敵、とみなされてしまいます。そして、彼らに石を投げつける民衆・・・・・・。人々のために戦っているというのに、その人々から疎まれてしまう、そんなサイボーグである彼らの悲しさの象徴的な場面です。子供の頃、このシーンの悲しさ、理不尽さに胸を痛めたことを思い出します。その理不尽さが悲しくて、眠れないくらいだったと。・・・・・・でも。今見てみると、超・がっかり。このシーンの絵がもう、本当にひどくて(泣)!!何だかもう哀しみも半減・・・というか、別の悲しみやむなしさが!!新ゼロって、ときどき名シーンの絵が泣けるほど崩れているんですよね・・・(ため息)。
 でも、ちゃんと、希望をもてる終わり方にはなっているんです。ジャッカの遺志をつぐ少年の決意で、このお話は幕を閉じます。


 

2008.04.26