映画 バベル 感想(ネタばれあり)

 バベル、あちこちにレビューがアップされてますね。中には、“は〜、そういうことか!”と思ったものもあるし、すばらしいものも多いのですが・・・。あまり読みすぎちゃうと書けなくなりますので、とにかく、1回観た率直な感想、ということで私はアップしちゃいます。
でも、映画のなんたるかがわかっているわけではないので、素人のたわごとということで流していただければ幸いです。

 物語は、モロッコ、アメリカ〜メキシコ、そして日本と、それぞれの地で進んで行くのですが・・・。
一番印象深かったのが、(またしても・・・という感じなのですが)モロッコの兄弟。しかも、またしても弟の行動がきっかけで兄が死に・・・・・・あ、いえ、死んだかどうかはわからないのですが、少なくとも瀕死の重傷・・・。(ちょっと、トロイが頭を過りました、笑)
 ともかく・・・兄弟の様子をみてて、“あ〜、いるよなあ、こんな兄弟・・・”と思いました。弟のほうが何かと要領がいい。今回の場合は、銃の腕もいい。それにお兄さんは嫉妬している・・・・・・。明確な“嫉妬”ではないかもしれませんが・・・それに近い感情。こういうのって、多かれ少なかれ、多くの兄弟で見られる図式なのではないかと思います。トロイ王子の兄弟然り、おそらくティベリウス兄弟も・・・・・・。
(これらの兄弟は、お兄さんが弟と比べて劣っているわけではないのですが、弟の要領のよさというか、人好きのするところというか、そんなところはどっちにしてもお兄ちゃんにとってはうらやましかったんじゃないかな、と思います。)だから、今回の場合も、お兄ちゃんの苛立ちが、私にはわかるような気がします。
でも、決して仲の悪い兄弟ではありません。やっぱり、どこにでもいるような、仲のいい兄弟。弟は・・・おにいちゃんのことが好きだったからこそ、お兄ちゃんが撃たれたときに投降したのだと思います。そのときの必死さはやはり胸につまされました。

 アメリカ人観光客狙撃事件を軸にして、めまぐるしく変わる場面。一つ一つの事件は、ほんの些細なきっかけで、いつでも、どこでも起こりそうなことから始まってしまいます。ただ、どうしてこんなに悪いタイミングなの?という感じなんです。そして、どこででも、誰にでも起こりそうな心のすれ違い。どこの国を非難するとか、どこの国が正義とか、誰がいいとか悪いとか、そういうことじゃなくて、ただ淡々と現実が映し出されているような気がします。世界が変わっても、描かれている情景は、あまりにも身近で。アメリカ人夫婦のすれ違いも、ほんとに普通の身近な出来事(きっかけは、“身近”とはいえないかもしれませんが)。その夫婦が絆を取り戻して行く過程も、状況としてはとても日常的とはいえませんが、すごく理解できます。日本の聾唖の少女のことだって、一見すごくショッキングなんだけど、突き詰めてみれば、全然特別なことではないように思います。辛くて淋しくて、誰かを求めて・・・そんな感情って、多くの人が経験するのではないかなあ、と思うのですが・・・。それに、メキシコの若者のような苛立ちですら、私にも身に覚えがあります。(そのまんまのシチュエーションではないですが、もちろん)そんな、あまりに普通にあることの連鎖がかえって、胸につまされるといいますか・・・。

 話は、各々の出来事に対して、結末まで見せていません。でも、救いようのない終わりではない。そこに私は救われました。私は、一筋の希望にでもすがって生きたいから。それに・・・あんな終わり方にしては不思議なくらい、中途半端感もなかったです。

 号泣する話ではありませんでしたが、何かがこみ上げてくるような、そんな話でした。