ティベリウス語り 

0.なぜにティベリウス?(前書きにかえて・・・)

 

 ローマ人の物語・・・経営者必読の書だとか。でも、そんなことは私には関係ありません。確かに、組織、指導者のあり方、政治とは、国家とは・・・など、ローマ人から学ぶ(というか、再認識、なのかな?させられる)べき点が数多くあり、そういう読み方もできるとは思うのですが、私は、様々な人間ドラマのほうに興味がそそられていて、そちら方面で楽しんでいます。そして、当然ながら魅力的な人物が次から次へと現れるのですが、ここで私のハートを鷲掴みした(表現古い?)人物がいます。それが、ティベリウス。文庫本で読んでいるため、まだ途中ではあるのですが、ここまでで、これほど心を奪われた人はいませんでした。
 古代ローマで、おそらく最も有名なカエサルは、もう、完璧で、非の打ち所のないスター、という感じです。市民からも、そして女性たちからも好かれ、カリスマ性があります。暗殺されてしまいはし
ましたが、彼の死は人々から惜しまれてるし、神格化はされるし、と、本当に非の打ち所がない感じ。でも、ティベリウスは全然違います。また彼は、偉大なる初代皇帝であり、やはり神格化されている、ある意味偽善者で要領のいい、アウグストゥスとも違います。・・・要は、どう考えても、マイナーキャラなんです。

 すごくあいまいで勝手な私の感想としては・・・彼は、“映画TROY”のヘクトルと共通するものがあるような気がするのです。もしも、映画の世界観で彼が生き残って王位を継いだら、あるいはティベリウスのようになってしまうのでは・・・とか想像してしまったりします。
 皇帝ティベリウスの治世の前半は、もう、可哀想なくらいに、元老院に協力を求め、誠心誠意で接していました。でも、元老院のほうはその思いに応えることはありませんでした。人を欺いたりすることの出来ない彼は、正面からぶつかっていき、そのたびに裏切られる・・・そんな感じと読み取れました。また、即位前、つまりアウグストゥス帝が健在だったときには、“机上”でしか作戦を考えられないアウグストゥスと、実戦経験の豊富なティベリウスの間には軍事戦略上の意見の相違も相当あったようです。そんなこんなのエピソードはまるで・・・映画の中のヘクトル。現実を直視しようとしない神官や父王に真っ向からぶつかっては、むなしくなるという様を思い出すのです。ヘクトルだってきっと、こんなことがずっと続けば・・・・・・ひょっとしたらキレるかもしれない。(そういう意味では、さっさと死んでしまったのはよかったのか・・・?なんて思ったりも!)また、城壁の中で平和ボケしているトロイの人々は、きっと、ローマ市民と同じく、現実を直視せず、堅実な統治が続けば不満を持ちはじめるに違いないと思えてもきます。そうすると、ティベリウスとヘクトルの置かれた状況は、意外に似ているのではないか?などと考えてしまうのです。

 ともかく・・・おそらくは彼のことを好きなどというのはとってもマイノリティーだとは承知はしているのですが、でも、“彼だってすばらしかったのよ〜!”“嫌われちゃったのは彼のせいだけじゃないのよ〜!”などと、弁護をしつつ、ティベリウスの人生を紹介し、彼への思いをぐだぐだと語りたいと思ったのでした。おそらく、塩野七生氏の“ローマ人の物語”からの引用とか、そんなのが満載になりそうです。