Tiberius Caesar /G.P.Baker著

 この本は、G.P.Baker(1879〜1951)という、“1920〜1930年代のの著名な歴史家”(本の解説部分に記載)によって書かれたティベリウスの伝記で、塩野七生さんの『ローマ人の物語』の参考文献リストにも載っています。タキトゥス、スヴェトニウスをはじめとする資料をまとめたものであろうと思われますが、カプリでの変態生活(笑)には触れられていないので、それなりに信憑性のある資料、部分を検証してまとめてあると信じています。
 ぱらぱらと読んだときに、比較的にでもティベリウスに肯定的で、彼の業績を認めているので、ティベリウスファンとしては、やっぱりこれは紹介したいな、と思いました。『ローマ人の物語』と重なる部分も多いとは思うのですが、載っていないエピソードもいろいろありましたので、そういったものを中心にたらたらと紹介できたら・・・と思っています。
 ただし、今現在(2008.3.27)で、タキトゥス、スヴェトニウスは未読です。なので、私にとって新鮮な話でも、そういった書籍をお読みの方にはいまさら新しい話でもないのかもしれません。その点はとりあえず大目に見ていただけると嬉しいです。
 また、この本、英語なのですが、なんせ私の語学力がひどいレベルなので、意訳、誤訳、また都合のよい解釈など多々あると思います。その辺もまた、広い心でお許しいただければ幸いです・・・。(もし既読の方で間違いなどに気がついた方がおられたら、是非ご指摘をお願いします)



0.前書き

 この本の前書きでは、ティベリウスの治世の意味、帝政への流れとその後世への影響などについて触れられています。このあたりはもう、専門の方にお任せして(笑)、著者がなぜティベリウスに関心をもったかの理由について述べられた部分の内容を紹介したいと思います。

 ティベリウスへの関心は、政治学的な面だけでなく、彼が心理学的な面の問題点を持っていることにある、と著者は述べています。イギリス人学者らしく、例えとして、『彼はハムレットとリア王とオセロを一つにしたような、いやそれ以上複雑な人物』だと。そして、まるで二人の人物が存在しているようだとも述べています。一人は、不器用だけどで正直で、立派な軍人・政治家で、厳格で公正で有能な人物、そしてもう一人は残忍で邪悪な人物・・・。こういうとらえどころのない人物について理解しようとすることはとても困難と感じているようです。
 そして、この本の意義について、ですが・・・今更ティベリウスの人格を糾弾するものではないと述べています。もっともっと悪人は歴史上にもたくさん存在してます。また、近代のタキトゥス、スヴェトニウス信者(の歴史家?)などは、冷静、公平に見るよりも偏った味方やゴシップに捕われる傾向があり、これらと一線を画したいと考えたようです。そして、“彼の話は、政治的歴史の一部としての役目から離れたところでも、人生の教訓を与えてくれるのではないか”というようなことを述べて締めくくっています。


 
 私自身は・・・“二人の人物”・・・という記述に関しては、そうかな??と思います。あくまでも、『ローマ人・・・』を読むと・・なのですが、塩野さんの解釈で読み進めていくと、ティベリウスの言動などに特段の矛盾点はみられないような気がするのです。単純な人物とはとてもいえませんけど、でも、一人の人物の人格として理解できるような気はしています・・・。

 ともかく・・・それでは、いったいどれほどの長さになるのか、いつまでかかるのか、皆目見当もつきませんが・・・本文の紹介へ。

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